2022年03月31日 15:22
ルパン三世 セブンデイズ・ラプソディ
ルパン三世の王道ではあり、ストーリーはいつものように痛快なエンターテインメントと成っている。ルパン一味は、トリックスターのチームであり、グレーゾーンに居るのだが、それが、真性に黒くて悪い奴ら、との最大の違いであり、ルパンの力量を知り、ブラックカードでニューヨークのホテルのスイートを借りて、密室にて、おじさんであるルパンを一生懸命口説くミシェルの行動のセレブぶりは、まさにアメリカンであり、同時に、この無防備さ、ルパンに対するオープンさには、誰でも良い、行き刷りのパートナーを求めたもの、では無いだろう。
つまり、ミシェルは、豪腕のグローバル企業CEOの父親が、元大佐であり、ジャングルに構えた会社MIXを根城にして、きな臭いビジネスをして、ダークサイドに堕ちている事を知っていて、心を許せない。家族に対する愛情の欠如が、大人のビジネス的なパートナーシップながら、何だかんだ言って、鋼の結束を誇る、ルパンのファミリーに、魅力を感じたのでは無いか。父親ガズは、郷里をも捨てているから、ノスタルジーは、地域にも、国にも無い、と言う背景にこそ、MIX社が計画するテロ事件の布石にも成っている。
とにかく、そうしたシビアであり、クリティカルな死に至る病たる、テロや暴力への渇望と言う事が、許される訳では無い。だから、巨大ダイヤ、女神の涙、とは、国を背負った最高のファーストレディである、自由の女神、の如く、有り様を象徴するもので、女神の涙、にすら感じ入る事の無い、恋愛回路を持ち合わせない、野蛮さは、アメリカにおける文化、文明の質からすれば、ファー・フロム・ホーム、な、野暮で学びの無い人間性の悪さ、を示すものでは無いか。
従って、そうした、野蛮なMIXと関わる事にも、歪んだ団結と、家族の犠牲、反抗期を背負った小さな女神ミシェルが、ルパン一味を引き込んで彼らの善と悪との対立を呼び込んだのでは無いか。
また、ルパン一味が壮大なストーリーを抱えて来て、稼業を連戦連勝して来たのに対して、敵方にも、ドラマがある。つまり、悪徳に対する報酬とは、いずれ裁きが下る、と言う事であり、例えば、MIX社の私設兵であり、利益や欲望によって簡単に鞍替えする、尻の軽い男ファイアーら三人組は、いささか、ドラマを舐めていて、そうした輩を惹き付けるガズのやっている事は、全く、次世代にあるミシェルと言う愛娘への愛情を欠いたもの、だと言えるだろう。
だから、傭兵のリーダー格のライアットが、遠大な野心を抱いている事に比して、ファイアーらなどは、雑兵に過ぎず根無し草だと言える。ともあれ、ライアットも元軍人だから、力の扱い方は知り抜いているところで、ガズの支配下に再び入る事は、彼のプライドを傷付けた事だろう。
各個人が、抱いているストーリーとは、十人十色であり、そこに年齢による上下関係は無い。間違っていれば、ちゃんと諌言もするのが、誠の父娘関係では無いか。だから、ミシェルはルパン一味が、互いに信条の違いによっては、利益の違いによってさえ、反目する理由に何を観ただろうか。恐らくは、ゲームのように危険なるも、薔薇色のトリックスターの人生を観た、と思う。そして、本当に強い大人のあり方も観ただろう。
つまり、ミシェルは、ルパン一味らがフリーランスとして、互いを引き立てるあり方に、理想や野心としてアメリカの外に帝国を率いるガズとの違いを観たから、グレーとブラックとの違いが分かる慧眼を持っていて、ルパンを悪と見なさなかった、と言う事で、いわば、持てるクラリス、では無いか。ルパンのモテ男としての面目躍如と共に、彼のカリオストロの激戦から、彼の気質は変わっていない、と言う事でもある。
ともあれ、ブラックカードを自由自在に使い、派手に豪遊をしようと思えば、出来てしまう、ミシェルは、ルパンと2人で居る時は本当に楽しそうで、ルパン、ミシェルは、泥棒と令嬢、だから、それぞれ尊重するのがビジネスとジャーニー、で異なるのだが、トレジャーのあり方、不可侵たる聖域としての人生観が、ポジティブなベクトルに向かっている事では、近いものがある。つまりは、如何なる所業を行い、ちょっと良くない罪に触れたとして、踏み止まるのは、心に大事にしているモノが、物質では無く、ストーリーである事が、共に歩んで行ける理由となるのでは無いだろうか。