2023年01月14日 18:44
ルパン三世 血の刻印 ~永遠のMermaid~
ルパンの血に流れる、意外な義の力と、財宝の大いなる謎。ストーリーの根底にあるものは、予定調和では無く、エンターテイメントの進化である。財宝、人魚の鱗、を巡って、悪党らがうごめくも、人魚と言えば永遠の命の宿主で、日本の神話に繋がるミステリーでもある。果たして、ルパンはこの複雑なストーリーから生き延びる事が出来るのか。
エンタメ作品が、ストーリー性でドラマに劣るとは思わない。本作にはしっかりしたロジックがあって、また、古色蒼然たる人魚伝説があり、その肉を喰らい不老不死となった女性、八尾比丘尼が遺した財宝を巡るレースがある。平和な世の中に、不老不死とは穏やかでは無いが、ルパン一味は、平和にも対応して居て、悠々自適だ。不二子がいつものように問題を持って来る、深紅の禁断の実、を平然と喰らう大物のお約束も華やかである。
不二子と手を組んだ藤堂という、強欲なおばさんが最初の敵であるが、この女性を巡る顛末には、悲劇的要素もあるが、興味深いと思う。ルパンらにとっては、彼らの武勇とか反射神経は、楽しく暮らす為の技、であり、レースのある人生がエンターテイメントであるのでは無いか。実際に、人魚の鱗をオークションに掛けたパーティに入り込み、それぞれに変装をして、次元は分厚いステーキを焼き、ルパンは銭形を尻目に酒を嗜むあり様である。獲物も、あっさり手に入れるが、これには、裏のトリックがあって、一筋縄では行かない。
意外だが、銭形は、ルパンの最大の理解者でもあって、無残に爆破された会場を観ても、人殺しをしない事でルパンの犯行では無いと、見破るのである。藤堂を上回る、悪である氷室こそが、歪な変装であり、反社会的なペルソナを被っている、暴力を心酔する本物の仮面悪党なのである。藤堂も腹黒いから、自業自得であるが、ちょっとこれは無いと思う。刀遣いと言う意味では、鮮やかに敵だけを斬る、斬鉄剣、の極上の使い手である五右衛門には遠く及ばないし、ルパンのコメディともミスマッチであろう。
藤堂と共に連れ添って居たミサは、人質となるも、このストーリーのキーマンである。恐らく、藤堂を焚き付けたのは、氷室であり、ルパンという大泥棒を利用した、この陰謀が、逆にルパンの逆鱗に触れる事になるとは、氷室も思ってない筈である。彼が独りで悪事を計画しても、必ず露見して、善と悪は繋がって居るから、事件に対する本来のブレーキ役は、銭形であるが、この件に限っては、ルパンのコミットと影響力の方が遥かに大きい。これは、つまり、大泥棒ゆえにあるプライドとか、ルパンの意外な正義心をくすぐる、「犯罪のタブー」を犯した事で、ルパン一味に宣戦布告をしてしまったのだろう。
そして、思わぬ収穫と言うか、ルパンには、彼を先生、と慕う、マキという少女が現れ、フィジカルも反射神経も抜群で、その上、ルパンの後継者を自称するだけの自信家であり、また、思い込みの激しい性格である。少女としては、魅力的な存在だ。前作では、くのいちのアスカが銭形を継ぐ者であったが、その意趣返しというか、ルパンを継ぐ者が現れる事や、更に、美しき姉妹愛がある事も、何やら、前作との繋がりを感じる所である。
姉妹と言っても、義理の繋がりで、心に誓っただけの関係だが、強い姉妹愛は、マキにとっての心の支えであり、それが、誰か姉を救いたいという、義侠心から生れたものだ。ルパンは、美人に弱いから、マキにも大いにくすぐられるものがあったのだろうが、義侠心は別である。また、その「義」が、ルパンが忘れていた意外な絆、を蘇生させるものがあって、ここに、氷室の野望とは全く異なる、本当の「貴重なる人生」の芝居模様が観られる気がするのである。エンタメにもドラマチックな要素がふんだんにある、それが、ルパンの世界観の包容力だ。
また、藤堂を巡る、序盤におけるどんでん返し然り、氷室の暗躍に対して、銭形の捜査の手が及ぶ事で、ルパンは重力からちょっと自由になる。もともとが、自由奔放な人だが、主客逆転というストーリーの深みが、彼の居場所でもある。だが、ルパンですら、追い詰める立場になった氷室とは何者であろうか、と言う事だ。小柄で大物には観えない、悪徳インテリであり、人の道を外れているのは、他のシリーズのヒール達と同様であるが、内なる狂気の恐さがある人物であり、それが外向きに解放された時に、もっと恐ろしい事態になるかも知れない。神話伝説には、神懸りがあるから、何が起こるかも想定外である。
エンタメ作品が、ストーリー性でドラマに劣るとは思わない。本作にはしっかりしたロジックがあって、また、古色蒼然たる人魚伝説があり、その肉を喰らい不老不死となった女性、八尾比丘尼が遺した財宝を巡るレースがある。平和な世の中に、不老不死とは穏やかでは無いが、ルパン一味は、平和にも対応して居て、悠々自適だ。不二子がいつものように問題を持って来る、深紅の禁断の実、を平然と喰らう大物のお約束も華やかである。
不二子と手を組んだ藤堂という、強欲なおばさんが最初の敵であるが、この女性を巡る顛末には、悲劇的要素もあるが、興味深いと思う。ルパンらにとっては、彼らの武勇とか反射神経は、楽しく暮らす為の技、であり、レースのある人生がエンターテイメントであるのでは無いか。実際に、人魚の鱗をオークションに掛けたパーティに入り込み、それぞれに変装をして、次元は分厚いステーキを焼き、ルパンは銭形を尻目に酒を嗜むあり様である。獲物も、あっさり手に入れるが、これには、裏のトリックがあって、一筋縄では行かない。
意外だが、銭形は、ルパンの最大の理解者でもあって、無残に爆破された会場を観ても、人殺しをしない事でルパンの犯行では無いと、見破るのである。藤堂を上回る、悪である氷室こそが、歪な変装であり、反社会的なペルソナを被っている、暴力を心酔する本物の仮面悪党なのである。藤堂も腹黒いから、自業自得であるが、ちょっとこれは無いと思う。刀遣いと言う意味では、鮮やかに敵だけを斬る、斬鉄剣、の極上の使い手である五右衛門には遠く及ばないし、ルパンのコメディともミスマッチであろう。
藤堂と共に連れ添って居たミサは、人質となるも、このストーリーのキーマンである。恐らく、藤堂を焚き付けたのは、氷室であり、ルパンという大泥棒を利用した、この陰謀が、逆にルパンの逆鱗に触れる事になるとは、氷室も思ってない筈である。彼が独りで悪事を計画しても、必ず露見して、善と悪は繋がって居るから、事件に対する本来のブレーキ役は、銭形であるが、この件に限っては、ルパンのコミットと影響力の方が遥かに大きい。これは、つまり、大泥棒ゆえにあるプライドとか、ルパンの意外な正義心をくすぐる、「犯罪のタブー」を犯した事で、ルパン一味に宣戦布告をしてしまったのだろう。
そして、思わぬ収穫と言うか、ルパンには、彼を先生、と慕う、マキという少女が現れ、フィジカルも反射神経も抜群で、その上、ルパンの後継者を自称するだけの自信家であり、また、思い込みの激しい性格である。少女としては、魅力的な存在だ。前作では、くのいちのアスカが銭形を継ぐ者であったが、その意趣返しというか、ルパンを継ぐ者が現れる事や、更に、美しき姉妹愛がある事も、何やら、前作との繋がりを感じる所である。
姉妹と言っても、義理の繋がりで、心に誓っただけの関係だが、強い姉妹愛は、マキにとっての心の支えであり、それが、誰か姉を救いたいという、義侠心から生れたものだ。ルパンは、美人に弱いから、マキにも大いにくすぐられるものがあったのだろうが、義侠心は別である。また、その「義」が、ルパンが忘れていた意外な絆、を蘇生させるものがあって、ここに、氷室の野望とは全く異なる、本当の「貴重なる人生」の芝居模様が観られる気がするのである。エンタメにもドラマチックな要素がふんだんにある、それが、ルパンの世界観の包容力だ。
また、藤堂を巡る、序盤におけるどんでん返し然り、氷室の暗躍に対して、銭形の捜査の手が及ぶ事で、ルパンは重力からちょっと自由になる。もともとが、自由奔放な人だが、主客逆転というストーリーの深みが、彼の居場所でもある。だが、ルパンですら、追い詰める立場になった氷室とは何者であろうか、と言う事だ。小柄で大物には観えない、悪徳インテリであり、人の道を外れているのは、他のシリーズのヒール達と同様であるが、内なる狂気の恐さがある人物であり、それが外向きに解放された時に、もっと恐ろしい事態になるかも知れない。神話伝説には、神懸りがあるから、何が起こるかも想定外である。